AI活用のススメ(シニアの結晶性知能編)

人生100年時代と言われて久しくなりますが、それと合わせて出てきた年金不足2000万円という問題には愕然として、まだグサっと胸に突き刺さったままでおります。その後、「ライフデザインの教科書」(出川通氏と弊社代表浅賀桃子との共著)と出会い、65歳以降10年間フルタイムで働ければこの老後資金2000万円がほぼ充当されると知り、胸の傷は少なからず癒された気持ちでおります。

一方で、ストレスとの付き合い方(その六)で紹介させていただきましたように大怪我や大病をしてしまった場合、この「健康」という働き続ける上で大切な前提条件がなくなってしまう可能性もあります。統計データの中には60代2人以上世帯の平均貯蓄額2033万円(金融経済教育推進機構)という情報もありますが、この統計データの中央値は650万円となっており、現実には60歳定年+継続雇用もしくは65歳定年の方も、まだまだ定年以降も働かなければならない方も多くいらっしゃるのが実情ではないでしょうか。

働き続ける上で

会社員の場合、定年を過ぎても働き続けることを考えた際に、様々な悩みを持たれるのではないでしょうか?一つのケースですが、55歳で役職定年となり、60歳で定年、65歳まで雇用継続となるものの給与所得は半減。仕事は変わらないとすると、モチベーションの維持が難しい場合もあるのではないでしょうか?再び同じくらいの所得や地位を求めて転職することも考えられますが、私自身を振り返ってみて簡単なことではないと感じています。もともと要領が悪い上にw若い時のような適応能力はなかなかありませんし、長時間残業(今となってはNGですが)や勤務後の勉強で新しい仕事を埋め合わせすることは体力面も含めて容易ではないと感じています。

流動性知能と結晶性知能について

流動性知能と結晶性知能についてひょっとするとあまり聞かれたことがないかもしれません。この言葉はメンタルヘルス・マネジメント検定の教科書に記載されており、実際に試験でも出題されています(最近、看護師の国家試験でも出題されていることを知りました)。新しいことを覚えたり思い出したりする能力「流動性知能」は40歳頃をピークに低下する一方で、知識や経験を活かし総合的に判断する能力「結晶性知能」は80歳に至るまで上昇の可能性があります(引用元『安全と健康』59巻12号)。年齢的にも定年前後の年齢ともなると「流動性知能」では若い方にはまるで敵わないと考えられますが、「結晶性知能」に定年後の仕事の方法にヒントが隠されていると考えました。

一方で。。。。

「結晶性知能」はそのままでは誰もが即戦力となりうるとは限りません。また、社内ではスペシャリストであっても、自社外の企業を通して見るとジェネラリストであることが多いのではないでしょうか?実際に私自身も、企業内ではIT部門のリーダーでしたし、メインフレームでCOBOLの開発をしたこともあれば、アセンブラやC言語でワークステーション上のアプリケーションや、工場の組み込みソフトウェア、果てはTVゲームの開発までいろいろ行ってきていますが、気がつくと「今でも通用するのか?」という厳しい現実に突き当たります。以前、中堅の営業職の方から「君には技術があっていいね」と言われたことがありますが、定年前後の年齢で若者や働き盛りの方と同じ能力を発揮できるかというとそうではありません。企業では専門の業務以外の様々な業務を行うこともあり技術面で尖っているわけでもなく、スキルのアップデート不足は明白でした。

AI活用のススメ

少し前の話になりますが、TVゲーム開発時にデータを加工して流し込む際に自分の得意なC言語で書くとおよそ3千行と想定(コンバータは多数書いていたので容易に想定)されるプログラムを作らなければならなくなりました。ところが、自分の作ったライブラリはその前の企業に置いてきましたから(それはそうだ)ゼロベースで書くには骨が折れる、ということで、当時テキストデータの加工に適していると言われていたPerlという新しい言語で作成したことがありました。結果、約300行で同等の機能を作れてしまい新しいプログラム言語の進化にとても驚いたことがありました。
その経験が頭に刻まれた中で、プログラムから遠ざかった数年前に、今度はECのシステム間で移行するごく簡単なデータコンバータを作ることになりました。コンバータを作るライブラリが充実していたPythonという言語(もともと興味があった)で試しに作ってみたところ、わずか数時間で出来上がり、そのときは「まだ自分にもやれるのでは」と、少し思い上がった気持ちにさえなったのを覚えています。
ところが半年後、生成AIの力を試そうと同じ要件でPythonのコードを生成させたところ、わずか30分ほどのやり取りでほぼ同じものができてしまいました。
その時の衝撃と言ったらありませんでした。。。

AIも使い人次第

生成AIで作成した最初の成果物は役に立たない代物でした。確かに要求した通りには機能しているようでした。例え話ですが、自動車を作れと言って、タイヤが4個付き、自動車になっているような体ではあったのですが、細かな部分は要求しない限りアウトプットしてくれません(当然です)。また、コンピュータにおけるソフトウェアは、プログラムを作成する開発者と、それを使用する利用者では全くスキルセットも異なりますし、理解が及ばないこともたくさんあります。こうした部分では、幅広い知識や経験が求められると思います。コンピュータもAIも、なかなか「よきにはからえ」ではモノは出来上がりません。

結晶性知能の活用方法として

これまで、皆さんが培ってきた能力、「私には何もない」と仰られる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、少し待ってください。ちょっとしたことですが、最近自社でキャンペーン用のグッズを配布するために袋詰めを行ないました。誰にでもできる軽作業ですが、以前、自分が開発した商品の生産ラインをチェックした関係から、1行程で何秒かかるのか、完成形はこれで良いのかなど普通の方からしたらどうでも良いような事を考えて作業しました。おそらく皆さんの脳みその中にもこのような事がきっとあると思います。シニア世代が持つ長年蓄積された知識や経験である「結晶性知能」は、AI活用と非常に相性が良いと考えています。むしろ、流動性知能が衰えても、結晶性知能があるからこそAIをより活かせる、と捉えることもできます。皆さんにもきっとこれまでに培った結晶性知能が必ずあると信じています。

結晶性知能を活かすため棚卸しのススメ

結晶性知能を真に活かすためには、「自分の中にどんな知識・経験・強みが蓄積されているか」を正確に把握する=棚卸しが不可欠です。AI活用の際に、特にご自身の良さ・長所に気づいていない方はご自身の棚卸しをされてはいかがでしょうか?棚卸しのツールとして得意・不得意を数値化してくれる脳診断テストB-Brainも是非ご活用いただければと思います。

まとめ

シニアの持つ結晶性知能は、AIを使うことで「時代遅れになりつつある知識」ではなく、「現代的価値を持つ知恵」に変換できるのではないかと思います。これはシニアが社会の中で再び中心的な役割を果たす可能性を開く、とても大きな強みだと考えています。結晶性知能が豊かで、AIが提供する情報を「判断・応用」する力に長けているシニアにとって、AIはシニアの流動性知能の不足を補い、結晶性知能をさらに活かすためのブースターとなりうるのではないでしょうか?そのほか、AIはまだ誤情報を出力する事も多く、シニアの幅広い知識と経験でチェックできることはとても理にかなっているのではないかと考えています。

補足

タイトルの画像はChatGPTと対話しながら作成してもらったものとなります。コンピュータが苦手なシニアでもAIを使えば大丈夫!私自身も日々助けられて働いております。

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