悲しい表情の女性

今の時代、インターネットやSNSを使って非対面でも世界中の人と簡単に交流ができるようになりました。ネット友達などオンライン上のみの交流で顔を知らないという交流関係もあります。しかし、孤独を感じている人は多く、むしろ増えていると言われています。なぜ人は孤独を感じるのでしょうか?孤独からどのような影響を受けるのでしょうか?

孤独は心身ともに病気になるリスクを上げてしまいます。自身が感じている孤独や、周囲の孤独を感じていそうな人をほっておかないでほしいと思います。

孤独によるリスク

孤独が心身ともに危険であるということはよく言われている話です。具体的には、うつの症状を患う危険性です。スポーツチームや料理教室、愛好会など社交グループに2年間参加したことによりうつの兆候がなくなったというデータもあります。それほど、孤独とうつは密接に関係しているということです。心だけでなく身体にも影響し、心臓疾患や癌で亡くなる確率が高いと言われています。孤独は1日に15本のタバコを吸うのと同じくらい危険だと言われることもあるそうです。

しかし、孤独を感じない様にするのは現実的ではないと思います。そもそも孤独とはどの様なものでしょうか?

孤独とは、今自分が持っている社会的接点と求める接点に差があることにより生じる不安の感情です。精神的に安定するために多くの接点を必要とする人もいれば、少なくても済む人もいます。独りでいても人との親密さを感じることもありますし、大勢に囲まれていても独りの様な気分になることもあります。孤独とは主観的なもので、周りに人が多い環境にいても孤独を感じているなら孤独なのだと思います。

なぜ、そんな危険な孤独という感情を脳は送ってくるのでしょうか?

孤独が生まれる理由

孤独は誰もが時々感じるもので、心や体に危険性を与えるのには長い時間がかかります。つまり一時的に孤独を感じることは危険ではありません。

「孤独を感じない様にするのは現実的ではない」と言いましたが、それは人が孤独を感じることは動物として自然な反応だからです。なぜなら感情は脳が生存率を下げないために送ってくる防御反応だからです。生存率を下げないための脳の防御反応についての詳しい内容は関連記事をご覧ください。



脳は自律神経を通して各器官を制御しています。自律神経には闘争や逃走に関わる交感神経と心の落ち着きを司る副交感神経系の2種類があります。孤独により活発になるのはどちらでしょうか?独りの時間の方が心を落ち着けられそうですし、気に掛ける相手もいませんので副交感神経が活発になると思いがちです。しかし、逆です。孤独により活発になるのは闘争や逃走に関わる交感神経なのです。なぜなら人間は社会的動物だからです。集団を組織し、社会を構成することによって生存率を上げてきました。脳は集団に属することで身を守れるということを本能で分かっています。独りでいることを脳は助けを求められない状態だと判断し、危険に対して警戒しなければならないと考えます。長期的にこのようなストレスを感じた状態でいると身体にも影響を及ぼすということです。

社会との接点を感じる方法

では長期的に孤独にならないためには何が必要なのでしょうか?ソーシャルメディアやオンラインコミュニケーションの技術が進歩したにも関わらず、孤独を感じる人は増えていると言います。その理由の一つとしてエンドルフィンという神経伝達物質が関係していると考えられています。エンドルフィンとは鎮静作用や幸福感を与えてくれる物質で、触れ合うことにより分泌されると言われています。そして、この物質が集団を組織するのに役立っていると考えられています。

猫や猿がお互いに毛繕いをしている姿を見たことありませんか?この行動はグルーミングと呼ばれエンドルフィンを分泌させます。親密さを生み出し、集団を組織するための行動だと言われています。人間は他の動物に比べてはるかに大きな集団を組織できます。それは感情を共有するということでグルーミングに代わる効果を得たからです。学生の頃、文化祭などのクラスの出し物をきっかけに仲良くなったという経験はないでしょうか?他人と一緒に何かをするという経験が複数の人間に同時に同じ感情を抱かせるのだと思います。そして ”自分たち” という連帯感を生みます。つまり、同じ空間で時間を共にすることにより感情を共有でき、社会との接点を認識できるのだと思います。また、対面で会うことで相手に対して時間を使ったという印象が強くなり、集団に属しているというメッセージを脳に送ることができるのだと思います。

これからは対面と非対面のコミュニケーションを上手に使い分けることが重要になると思います。

孤独はひとりで解決しない

対面での人間関係が社会との接点を感じる効果的な方法だということが分かりました。しかし人間関係の悩みがストレスになることも多いですよね。人間関係の悩みが多いのは人が本能的に孤立を嫌うからだと思います。「集団から追い出されたらどうしよう」という恐れから発言することを躊躇したり、反応が見えず不安を感じてしまったりします。また、この様な状態は集中力を下げることも分かっています。理由は脳がこの問題を解決しようと注力するからです。それほど孤独は脳にとって解決すべき非常事態なのです。

孤独を感じるのは当事者だけの問題ではありません。職場や学校などで周囲の人も問題意識を持って対処に取り組んでほしいと思います。特に孤独を感じている時は交感神経が活発になっている警戒態勢です。周囲は敵対心を持っている人で溢れていると脳が勘違いしている状態です。他人を否定的に解釈したり、「どうせ私なんか...」と思いやすく孤立してしまう悪循環に陥ってしまいます。そうなると自力で脱することが難しい場合もあるということを理解しましょう。

自分も周りもまずは笑顔で挨拶することから始めましょう。とても基本的なことですが、「あなたを仲間として認識していますよ」というメッセージも込められていると思います。また、カウンセリングを受けることも解消方法としては有効です。カウンセラーとの関係から社会との接点を感じられるはずです。カウンセリングは一部の心を病んでいる人が受けるものではありません。定期的に継続的に受けるものという認識が広まってほしいと思います。